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- 法律雑学 - ものごとの根拠を探ります.                   (やっしー)
by yoridocoro
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事件はいつ確定するか(2)

ここでは刑事事件について述べます。

「最高裁が上告棄却 確定へ」などという報道を見かけます。
「確定へ」ということは、その時点でまだ確定していないということです。
日本は三審制です。刑事事件の場合、第二審の控訴審は高等裁判所(=高裁)で、第三審の上告審は最高裁判所(=最高裁)で審理されます。
ですので、最高裁は最終審理をするところですが、最高裁の上告棄却決定が出てもまだ確定ではないとすると、事件はいつ確定するのでしょうか。

上告棄却決定に対しては、その裁判をした裁判所である最高裁に、異議の申立てをすることができます。
判例は
「刑訴414条、386条1項3号により上告を棄却した最高裁判所の決定に対しては、同414条、386条2項により異議の申立をなすことができる」としています。
(昭和30.2.23最高裁大法廷決定.)
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=54758&hanreiKbn=02
そして、この申立てについては即時抗告の規定が準用されますので、申立て期間は3日です。
(刑事訴訟法422条.)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO131.html
日数計算については、上告棄却決定謄本が送達された(=裁判が告知された)翌日を1日目とする数え方です。
(刑事訴訟法55条1項により初日不参入.)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO131.html

(なお、最高裁が上告を棄却する場合、ほとんどは公判廷が開かれませんから、ある日、郵便で裁判所からの特別送達が届いてその結果を知る、という形になります。
マスコミ報道などが出てくるのも、この郵便で結果が届けられた後のことです。)

上告棄却決定が送達された翌日から起算して(=数え始めて)3日のうちは異議申立てができるということは、その3日のうちは「裁判内容はもしかしたら変わるかもしれない」わけです。
(異議申立てがあれば最高裁はそれにつき再び判断するのだし、異議申立てがまだない状態でもその3日のうちは「異議申立てがこれからある」かもしれない)
異議申立てがないままならば、3日という異議申立て期間が経過することで裁判は確定します。

では、異議申立てがあった場合はどうでしょうか。
異議申立てに対する決定も、やはり郵便で送達(告知)されますが、その送達された日に確定することになります。
「異議申立てに対する決定」に対して、再び上訴や異議申立てはできませんから、そこが終わりになるわけです。
(刑事訴訟法427条により再抗告禁止.)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO131.html

鈴木宗男議員に対する受託収賄等被告事件を例に、具体的に見ますと次のようになります。
(平成22年)
9月 7日 最高裁が上告棄却決定
9月 8日 上告棄却決定謄本が送達(告知)
9月10日 弁護人が上告棄却決定に対する異議申立て
9月15日 最高裁が異議申立て棄却決定
9月16日 異議申立て棄却決定謄本が送達(告知)、裁判確定

ということで、最高裁が上告棄却したと判る9月8日の時点では確定していないのでした。
 
by yoridocoro | 2010-10-03 12:30 | 法律雑学
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